『白い夏の墓標』

著者:帚木蓬生
出版社:新潮文庫/321頁/1983年

肝炎ウィルス国際会議の講演のためにパリを訪れた佐伯は、会場でアメリカの陸軍微生物研究所に勤めるという老人ラザール・ベルナールに出会う。彼の口から出たのは、佐伯の学生時代の友人で、当時アメリカにリサーチ・フェロウとして引き抜かれ、その留学先で20年前に事故死した黒田の名であった。ところが、ベルナールは思いもかけないことを佐伯に告げる。黒田はアメリカではなくフランスで、事故ではなく自殺によって命を絶ったというのである。佐伯はベルナールの導きによって、黒田の墓を訪ねることとなるが・・・。

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『ヒトラーの防具』や『薔薇窓』など、彼の外国を舞台とした作品が好きです。良い意味で翻訳物を読んでいるような気分にさせてくれるのです。『薔薇窓』などは、途中「あ、外国作品に日本が出てきた。うれしいな」と一瞬思った後、「あ、これは日本の作家が書いた本だった・・・」と思い直すことが何度かありました。

本作は、確かにウィルスや細菌について一般常識以上のことが書かれており、部分的に複雑にも感じるのですが、作品全体に無駄がなく、完全に引き込まれました。黒田の死の真相を当時の彼の恋人から聞かされるに至り、ここで話はおしまいか・・・と思いきや、そこからの完全消化は見事でした。ぶつぶつとした細かい粒のような伏線部分の残り、でもそれはそれであまり気にならなかったであろうざらざら部分を、大げさにではなくしっとりとふき取ってくれるような感覚・・・そんな心地よさを覚えながら読み終えました。

黒田のノートに書かれた言葉 「人は理由なしに生きることはできるけれども、十分な理由なしに死ぬことはできない」 が胸に響きました。

お勧めです!!!

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